使いやすさはTPOに宿る

写真-コンビニのコーヒーマシン

この記事は、商品やサービスの使いやすさを実現する上で無視できない「利用文脈」(context of use)を、事例を交えて分かりやすく解説するものです。

「利用文脈」とは聞きなれない言葉ですが、これはファッション用語の「TPO」(Time時間, Place場所, Occasion場合 の略、和製英語)とほぼ同じ意味です。お洒落な服が時と場合によっては場違いでカッコ悪いものとして見られてしまう事があるように、使いやすさを極めるべく苦労して設計した製品が時と場合によっては使いづらいものと見なされてしまうことがあり得る、ということです。

ご紹介する事例が皆様のファッションセンスならぬデザインセンスを養う助けとなれば幸いです。

コーヒーカップはどこに置く?

コーヒーサーバーコンビニのコーヒーサーバーの写真です。安くて美味しいので私も良く利用しています。2つある給湯口の間にコップを置くのに都合のよい空間があり、ここにコーヒーの入ったコップを置いて砂糖を入れたりフタを閉めたりすることができます。

しかし買うコーヒーの数が5人分や10人分であったらどうでしょう? コップをどこに置けばいいのでしょうか? 私は実際にコーヒーを6個買っている人を見たことがあります。そこはオフィス街の真ん中にあるコンビニでした。おそらくは急な来客にインスタントでない美味しいコーヒーを出したかったのでしょう。しかし本当に周囲のどこにも置くところがなく、仕方なくレジをふさいで一時置き場にしていました。その時のその人にとって、このコーヒーサーバーは使いづらいものでした。さらにいえば、レジ待ちをしている人にとっては待ち時間の増大であり、コンビニにとっては販売機会の減少であったということになります。

コーヒーサーバーそのものを設計変更するには及びませんが、オフィス街というTPOに応じて、一度にたくさん買う人のためにサーバー周囲のレイアウトを見直すべき事例であると言えます。

今日のTPO

「一人一個ずつ買う場合には」使いやすくとも「一度にたくさん買う場合には」使いづらい事もある。